水溶き片栗粉,ゼラチン

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このところ,ある国際会議のお世話に忙殺されて,休日もシコシコと事務作業をしていました.そのためブログの更新をする余裕がありませんでした.今も作業継続中なのであまり大したことは書けませんが,せめてこれらの動画のリンクだけでも. まずはシアシックニング流体である水溶き片栗粉(ウーブリック)を風船に詰めて色々遊ぶという動画. 次に粘弾性固体であるゼラチン(バリスティックゲル)に爆薬を仕込んでみたという動画. 増渕はすごく面白い動画だと思うのですが,どうでしょうか.シアシックニング,粘弾性,それぞれどうなるか予想してからビデオを見ると,色々考えるところがあります.

氷が滑る話

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少し前のことですがこのようなニュースがありました.氷の表面に水があるのは,気体状態にある水が氷の表面に析出するためだ,という発見です. 氷がなぜ滑りやすいのか(スケートやスキーはどうして滑るのか)は,水の薄い膜が氷の表面にあって潤滑剤の役割をはたすためです.実験的には氷の表面には(融点以下の温度でも)常に薄い水の膜があることが(以前の研究で)わかっています. 水の膜がどうして形成されるかについては,諸説あったのです.摩擦熱で氷が解けて水になる,というのはイメージし易いかもしれません.しかし,こすらないと水にならないはずなのに,何もしなくても水の膜は存在します.一方,圧力の効果というのもあります.これは水の相図(状態図)から出てくる議論です.このページを見るとよいでしょう.しかし単に氷に圧力を加えるだけでは氷の表面に水は出てこないので,説明不足です. 今回のニュースは,氷の上に展開される薄い水の膜ができる過程を観察した実験的研究に関するものです.気体状態の水が氷表面に析出する,言われてみればという気もしますが,だったらどうして水は氷にならないで表面に残るのか?という新たなナゾは残ります. 4年生の久世くんが取り組むテーマに現象としては似ていると思って取り上げました.

粘弾性流体中では精子は集まって泳ぐ?

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BBCに「こういう記事」が出ていました.ボルチモアで行われているAPS(アメリカ物理学会)でのコーネル大学のグループからの発表だということです. 内容については映像を見れば明らかです.ニュートン流体中だと精子はちらばって泳ぐが,粘弾性流体中だと集まって泳ぐという結果. 本当に粘弾性が重要なんでしょうか.この研究では流体に粘弾性を持たせるために当該液体(たぶん水)に高分子(たぶんPEOとか)を添加しています.高分子が精子同士の(静的な)相互作用を変えているだけのようにも思いますが... コロイド分散液体中に高分子を加えると,コロイド同士に親和力が働きます.こっちに原著論文.大きな粒子と小さな粒子があるとします.大きな粒子同士がある一定の距離よりも近づくと,その隙間には小さな粒子は入れなくなります.小さな粒子の分布に制限がある状態はエントロピーが相対的に小さいので,そのエントロピーロスを避ける為,大きな粒子間には,中途半端な隙間を潰そうとする力が働きます.これは朝倉ー大沢理論とよばれる,名大理物におられた両先生が構築された有名な理論です.精子があつまる原因としてはまずこの効果が考えられるなあと思います.さらに流体力学的効果を考慮にいれた研究だと,大きな粒子が近づくほど粘度が下がるといっています.粘弾性は関係ないんじゃないか?逆に,粘弾性で説明できる理屈がわかりません. 土井先生のOnsager原理を使った解析ができるかもしれません.

気体の緩和時間

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化生の松下先生,高野先生と高分子物理化学という講義を担当しています.その講義で寄せられた質問に適宜答えようと思います. 1/8の2回めの講義によせられた質問「気体の緩和時間はどのくらいなのか?」 そもそも気体が緩和するとはどういうことでしょう.気体がつまった風船を変形させたとします.すると中の気体の状態は平衡からズレて,速度などの分布関数が平衡状態のものとは変わってしまいます.しばらくして気体分子間での衝突が十分起きると,気体の速度その他の分布関数は平衡状態でのものに戻ります.これがここで考える気体の緩和です. さて,気体の緩和時間とは,気体分子の分布関数が平衡に戻るまで,統計的に十分な回数だけ衝突するのに必要な時間となります.気体の緩和時間がどのくらいの値となるか,ですが,気体分子の速度と平均自由行程(1回の衝突から次の衝突までに気体分子が飛翔する距離)がわかればオーダーが見積もれます.平衡状態からのズレが大きくないとして,まず平衡状態での平均自由行程をみるとこのくらいです.一方,気体分子の速度ですが,温度と気体分子の重さに依存しますよね.こちらも平衡状態での平均値を借りてくるとすれば,常温での窒素の場合でおおよそ500m/secくらいです.大気の平均自由行程を50nmとした場合,各分子は0.1ナノ秒くらいのインターバルで衝突します.仮に100回衝突しても10ナノ秒です.とても短いですね. 上記の計算は緩和時間のオーダーを見積もるためのものなのでかなりいい加減です.詳細に検討するには,衝突によって分子の回転や分子内の振動のモード分布が平衡化される過程を議論しないといけません.より詳しい議論のためには,この論文などを読んでください.

緩和時間の温度依存性

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化生の松下先生,高野先生と高分子物理化学という講義を担当しています.その講義で寄せられた質問に適宜答えようと思います. 1月8日の第2回講義では粘弾性と粘弾性解析の話をしました.その中で標記の質問が寄せられました.よい質問です.講義では温度依存性には全く触れませんでした. 粘弾性とは緩和現象の一種です.緩和現象とは,非平衡状態に励起された系が平衡状態に戻っていく,動的な過程(ダイナミクス)のことです.その過程は最も簡単には一次の反応式で書けます.励起された状態をB,平衡状態をAとして,B→Aと書きます.このときの反応速度定数をkとすると,その逆数が緩和時間τとなります. 反応速度論をやっている人たちは,反応速度定数kの温度依存性について学んでいるでしょう.現象論的には,アレニウスの式で書けます.緩和時間τはkの逆数ですから,アレニウスの式を書いてみると$\tau=\tau_0 \exp(E_a/RT)$となります.ここで$E_a$は活性化エネルギーで,$\tau_0$は$T$が無限大の極限での緩和時間です. アレニウスの式から緩和時間の温度依存性を見るとわかるように,温度が高いほど緩和時間は短くなります.粘弾性体の例としてヘアワックスを考えますと,温度が高いほど緩和時間が短い→ホールド性が弱い,ということです.逆に冬場で温度が低いと緩和時間が長く,ガチガチになってしまいます. 緩和時間の温度依存性は,温度時間換算則という重要な経験則に関係しています.(日本語のwikipediaには項目が無いようです.)

シアシックニング,シアシニングはどうして起きるのか

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化生の松下先生,高野先生と高分子物理化学という講義を担当しています.その講義で寄せられた質問に適宜答えようと思います.前回に続いて初回12/25日の講義に寄せられた質問,「シアシックニング,シアシニングはどうして起きるのか」を考えます. シアシックニング,シアシニングとは,Shear Thickening, Shear Thinning,と書きます.せん断流動を与えた時,せん断速度が高いほど粘度が上がるのがシアシックニング,粘度が下がるのがシアシニングです. シアシニングは身の回りに沢山あります.触ってヌルヌルするようなものはたいていシアシニング流体です.高分子液体とか,エマルションとか.高分子液体はウナギとか魚のヌルヌルした成分を想定してください.エマルションはクリームですね. シアシックニングは水溶き片栗粉です.テレビ番組などで罰ゲームとして使われていたりしますね.このビデオがとても分かりやすい. さてそれぞれ起きる機構ですが,一言で言えば,液体の中にある構造ができていて,その構造が流れによって変化するから,です.一般には,液体の中の構造が大きいと粘度は高く,小さいと低いのです. 例えば,物理ゲルのように弱い架橋構造を持っている場合,流れによって構造が破壊されます.破壊されると粘度が低くなるので,シアシニングを示します. 高分子液体でもシアシニングが観察されます.このときは高分子が千切れている,のではありません.高分子が流れに対して配向して抵抗が下がることと,流れによって分子間のからみあいが外れることが原因と考えられています.いずれにせよ,分子の様子が平衡状態とは異なる状態になることで生じています. 水溶き片栗粉の場合は,たくさんの微粒子が浮いているサスペンジョンと呼ばれる系です.このような系に速い流れを与えると,ジャミングといって交通渋滞のようなことが発生して,粒子が寄り集まった構造をつくって粘度が上がり,シアシックニングします.(上記の動画に関係する論文ではより詳細な議論が成されています.) 構造とレオロジーの関係はレオロジーの主要なテーマで,最近はレオロジーの論文を書こうと思ったら(シアシニング,シアシックニングにかぎらず)ほとんどこのアプローチになっています.

ダイヤモンドの弾性率はどうやって測るのか

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化生の松下先生,高野先生と高分子物理化学という講義を担当しています.その講義で寄せられた質問に適宜答えようと思います. 初回12月25日の講義ではレオロジーの基礎についてお話しました.その中で「人間が触って判る」弾性率の範囲について触れました.弾性率が最も高いのはダイヤモンドであることはよく知られています.が,金属やコンクリートとの硬さの違いは人間が触ってもわかりません.その理由は,指で触った時,骨よりも硬い物質については,人間の骨が変形するからです.骨よりも柔らかい物質(例えばゴムなど)であれば,ゴムが変形する様子を触感で捉えられます.しかし骨よりも硬い物質は人間が触っても変形させられません.変形するのは骨の方です.逆に,人間の肉よりも柔らかいものも感知できません.そのようなわけで,人間が触って感知できる弾性率は概ね10^10Paから10^5Paの間のもの,つまりプラスチックやゴムですよ,ということをお話したのでした. そこで出た質問.「ダイヤモンドの弾性率はどうやって調べるのですか?」これはよい質問です.講義では弾性率の定義として,応力をひずみで割ったもの,と教えています.ダイヤモンドを金属で挟んで,両側から押してひずみ(変形)を与える場合を考えます.この場合,ダイヤモンドは金属より硬いので変形せず,金属が変形してしまいますから,そこで得られる弾性率は金属の弾性率になります. 硬いものの弾性率はどうやって測るのか?これには音速を使います.音速は弾性率と密度に関係しています.超音波振動子とレシーバー(要するにスピーカーとマイク)で試料を挟んで,音を出して受信し,発信音と受信音とで遅れを計測すれば音速がわかります.このように音速を測ることができて,密度が別にもとめられていれば,弾性率を決めることができます.(音速と弾性率の関係はWikipediaにも書いてあります.)これを利用した実験系を用いて,ダイヤモンドより硬い物質を発見したとする論文もScienceに出たことがあります. 動物の筋肉の弾性率を,生きている状態で測りたい,というような目的でも音波を用いた計測は便利です.例えば名古屋大学応物での博士学位論文の一つにこういうのがあります(こちらの方が入手しやすいかも).著者の方は鈴鹿高専の教授をなさっています.

MDOI2015とCTM現象

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このような会を行いました.この会は土井先生の還暦を記念して2008年に最初に行い,それ以来ほぼ毎年行ってきました(昨年のように休んだ年もあります).土井先生のファンの集いというような,特にはっきりした定義がない会で,土井先生をお迎えして1時間くらいお話を伺う,ことだけ満たせば,何をしてもよい会です.最初の2008年は海外から著名な招待講演者を何人もお招きしてかなりちゃんとした国際会議をやりました.その後はホテルの一室を借りて食事会をしつつ2−3人がプレゼンしたこともあり,温泉に泊まりがけでやったこともあり,土井先生が北京に移られたときは北京で国際会議にしたこともあります.今回は増渕が工学部3号館に戻りましたので(もともと土井研は工学部3号館の北館最上階の西の端にあったのです)関係各位への増渕研のお披露目も兼ねて332講義室で行いました. 内容は上記のプログラムにあるとおりですが,土井先生のお話につづいて土井研関係者(卒業生および教員だった方)および増渕研関係者の話がありました.増渕研関係者とは山本先生と4年生2名です.4年生については,もちろん卒研はまだ完成していませんので,計画と途中経過をお話して参加者からご意見を頂きました.4年生は先日の報告会に続いて2回めのプレゼンでしたが,研究が進んで内容が伴ってきたこともあり,よいプレゼンができていました. さて具体的な内容においては土井先生のお話が(当然といえば当然ですが)大変おもしろいものでした.CTM(Coin through Membrane)現象に関する理論です.冒頭の先生のご説明によれば,3次元で考えるからコインが通らないのだ,次元を上げれば通ることは不思議ではない,とか.まあ結局そんなことはないんですが.これができるゴム膜は100円ショップで売っていると山形の牧野先生が教えて下さいました.どこかで入手して,増渕研におけるレオロジーデモンストレーションの一つに加えたいと思います.

レオロジーの役割について

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レオロジーとかソフトマター科学の分かりづらさというのは象徴的な応用がそんなにインパクトが無いように見えてしまうからだろうと思います.たとえば電気自動車とか発光ダイオードとか太陽電池みたいにそれとわかるイノベーションを世の中に提供するわけではないためと思われます.もちろん免震ゴムとか低燃費タイヤとかゲルインクとか黄金比率プリンとかD3Oとか発泡ポリプロピレンとか100%米粉パンとか...レオロジーの偉大なる応用はたくさんあるのですが.社会のルールを変えますみたいな方向ではないというか.既にあるものを今あるルールの範疇でよりよく,みたいな方向というか. それでこういう記事を見つけました.Rube Goldberg Machineというのは,いわゆるピタゴラ装置ですね.ここで紹介されている装置のビデオも眺めていると面白いのですが,それより記事をご覧いただきたく紹介しました. この装置は3Mという,セロテープやポストイット他様々なものを生み出してきている会社のブランドマシンなんだそうな.ブランドロゴとかブランドフレーズというのはよくあるが,ブランドマシンとは面白いですね.Rube Goldberg Machineというのはシンプルなことをたくさんの(無駄な?)ステップの組み合わせで実現するものという定義だそうです.3Mは一見シンプルに見えることに含まれるたくさんの科学に注目して,それを商売にしますよ,ということを端的に表現するとこのようなマシンになると. まさにレオロジーとかソフトマター科学の姿といえましょう.

ミクロかマクロか

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こういう記事がでました.これをメタマテリアルと言ってしまうのか...材料科学分野では材料そのものを分子レベルでメタマテリアルにする方向を目指したくなると思うのです.え?材料科学では色々な分子を組み合わせるから,このクマのように同じ部材の組み方を変えるのとは違うでしょ?と言われますか.はい,確かにそういう研究は多いですね.けれど高分子科学の場合は同種の分子で異なる構造を作れる(というか異なる構造ができてしまう)のです.例えばスーパーやコンビニの袋につかわれるポリエチレンは分子の並び方によっては超高強度繊維になります. この記事のアプローチと材料科学のアプローチはにているけど,どうも本質的に同じ,というのは何か心理的な抵抗があって,何が抵抗のモトなのか...(記事の方法論は優れていると思いますので方法自体をディスっているわけではありません.単に自分の中での気持ち悪さの問題です.すいません.) 要するに何をもってミクロとマクロの線引きをするか,という問題でしょうか.上記の記事では,単位となっている部材(数ミリ角くらいに見えますね)は,あくまでミクロという立場です.一方,これらの部材を組み合わせて人間の触感に現れるサイズのものがマクロであるとする.ここで,この単位部材ってミクロなんか?と自分の中の何かが突っ込んでいます.自分にとってのミクロは熱運動で自発的に平衡化できる大きさのものです.大きさとしては1マイクロメートル以下.それ以上大きいものは熱運動しないので,統計力学の範疇外.材料力学や流体力学で扱う領域です.そういうのはマクロなんじゃないかと.計算手法の問題かもしれません.自分が扱う熱運動するような物体の方程式系でかけるものはミクロ.それでは書かない系はマクロ.今回の記事は自分の中ではすべてマクロの世界の話. 自分のミクロ/マクロの区分けも恣意的なので,他はどうかと思ってググってみますと,大半は経済学の話になっていました.家計がミクロ.国家予算がマクロだとか.家計は熱運動で平衡化する...ということはないな.