シアシックニング,シアシニングはどうして起きるのか

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化生の松下先生,高野先生と高分子物理化学という講義を担当しています.その講義で寄せられた質問に適宜答えようと思います.前回に続いて初回12/25日の講義に寄せられた質問,「シアシックニング,シアシニングはどうして起きるのか」を考えます.

シアシックニング,シアシニングとは,Shear Thickening, Shear Thinning,と書きます.せん断流動を与えた時,せん断速度が高いほど粘度が上がるのがシアシックニング,粘度が下がるのがシアシニングです.

シアシニングは身の回りに沢山あります.触ってヌルヌルするようなものはたいていシアシニング流体です.高分子液体とか,エマルションとか.高分子液体はウナギとか魚のヌルヌルした成分を想定してください.エマルションはクリームですね.

シアシックニングは水溶き片栗粉です.テレビ番組などで罰ゲームとして使われていたりしますね.このビデオがとても分かりやすい.

さてそれぞれ起きる機構ですが,一言で言えば,液体の中にある構造ができていて,その構造が流れによって変化するから,です.一般には,液体の中の構造が大きいと粘度は高く,小さいと低いのです.

例えば,物理ゲルのように弱い架橋構造を持っている場合,流れによって構造が破壊されます.破壊されると粘度が低くなるので,シアシニングを示します.

高分子液体でもシアシニングが観察されます.このときは高分子が千切れている,のではありません.高分子が流れに対して配向して抵抗が下がることと,流れによって分子間のからみあいが外れることが原因と考えられています.いずれにせよ,分子の様子が平衡状態とは異なる状態になることで生じています.

水溶き片栗粉の場合は,たくさんの微粒子が浮いているサスペンジョンと呼ばれる系です.このような系に速い流れを与えると,ジャミングといって交通渋滞のようなことが発生して,粒子が寄り集まった構造をつくって粘度が上がり,シアシックニングします.(上記の動画に関係する論文ではより詳細な議論が成されています.)

構造とレオロジーの関係はレオロジーの主要なテーマで,最近はレオロジーの論文を書こうと思ったら(シアシニング,シアシックニングにかぎらず)ほとんどこのアプローチになっています.

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