おいしさ科学館:口紅

増渕がお世話になっている会社の一つに太陽化学があります.ここでは様々な食品,化粧品,その他に用いられる乳化剤や増粘剤を扱っています.それらの添加剤で食感や触感をコントロールしたり,あるいは保水性などの機能改善を行っています.

太陽化学はおいしさ科学館という施設を持っていて,ここではおいしさや使い心地を数値化して科学的に評価する試みを種種行っています.もちろんレオメーターも活躍しており,数台稼働しています.この連載コラムにいくつかの例が掲載されていて,どれも興味深いものです.例えばこのコラムにあるプリンの弾性率の話とか.おいしさ科学館の紹介ページにあるチョコレートの弾性率の温度変化は増渕がレオロジーの基礎をお話するときはよく使わせていただいています.(ちなみに著者で館長の山口さんは名大の先輩でもあります.応物卒ではなく理学部化学科のご卒業だそうですが.)

そのおいしさ科学館の最近のコラムで,口紅の使用感の数値化が紹介されました.口紅のレオロジーをきちんと測る方法は花王の名畑さんがこのような論文をすでに出しておられます(この名畑さんの方法をコラムでは従来法と称しています).名畑さんの方法では口紅を潰して均一化し,レオメーターの冶具に正当にセットして粘度や弾性率を得ています.一方,太陽化学では口紅を唇に塗る感触,口紅がついていない唇に口紅を引き始めた時の感触,を数値化しようとしています.すなわち,レオメーターに口紅を引かせて,そのトルクを評価しています.(評価をするときにどのようなモデル関数にするのが良いかというあたりで増渕も少しお手伝いしました.)

太陽化学の方法は,定義がはっきりした物性量を測っているとは言い難いです.また,少なくともコラムの範疇ではサンプルの中身や構造を提示しているわけでもありません.このようなわけで(名畑さんの論文とは違って)論文にするのは難しいのです.けれどもエンジニアリングとしてはとても面白いと思いますので,レオロジー(というよりもレオメーター)の応用例としてご紹介しました.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください