複合材料(?)の論文

現在増渕が所属しているのはナショナルコンポジットセンター(NCC)といって,プラスチックを炭素繊維で強化した材料を成形加工する技術の開発を行なっています.そういう場所のポジションをいただいていますので,貢献しなければならないと思って論文になりそうな事柄を探していたわけですが,ようやく1本論文がかけたので,投稿しました. Y. Masubuchi, M. Terada, A. Yamanaka, T. Yamamoto and T. Ishikawa […]

投稿論文のその後

しばらく前にこういう記事を書いて,論文3本投稿したことをお知らせしました. その後,2本はほぼ思った通りに採用になり,現在はゲラ刷りを待っています.この状態になると,submitted から accepted とか in publication とか in print  とかになります.(この3つの状態の違いはイマイチ分かっていませんが,厳密にはエディターから掲載するけど直しなさいよ,という状態がaccepted,この状態で掲載しますよ,という状態がin publication,ゲラができたら in printかなと思っています.) […]

総説を書いた

増渕雄一,”自動車用炭素繊維複合材料の成形法”,成形加工 27(11), 442-444 (2015) という総説が出版となりました.(成形加工というのはプラスチック成形加工学会の学会誌です.) 総説を書くというのは厄介な仕事です.総説,しかも日本語の総説,というのは,ニーズはあると思います.初学者にとっては分野全体を俯瞰してくれるのはありがたいし,しかも日本語だと読むときのハードルも低いですね.しかし,執筆する側にとっては,少なくとも積極的にやりたくはない仕事の一つです. 総説をあまり書きたくない,これには理由が2つあります. 理由の一つは,総説は論文に比べて業績として格下とみなされるからです.論文はここに書いたように査読というプロセスを経ますので,一応他の研究者の審査を経たことになっています.一方,総説というのは通常は査読がないか,あっても非常に軽微なものです(今回の総説もどなたかが読んで下さってコメントを入れてくださいましたが,論文に対するようなものではありませんでした).つまり,何を書いてもあらかた許されてしまうわけで,いうなればネット上の文章と変わらない(このブログの程度の)信頼性となります.(匿名ではないのでその分著者に責任はありますけれども.)この結果,研究者の履歴書において,総説は論文より格が下がります.書籍も総説と似たようなものです.紀要は自分の研究を書くものですが,審査が論文よりゆるいという意味では総説や著書と同等です. 理由の二つめは,報われない割にしんどいからです.総説では,当該分野の歴史を俯瞰し,現状での問題点を浮き彫りにして,将来への課題を示す,ことが求められます.あわせて,その歴史に沿って重要な論文を適切に揚げることが必要です.このためにはたくさんの論文を読んで,内容を理解して適切かつ手短に紹介しないといけません.(これは実は普段書いている論文でも同じで,それぞれの論文のイントロダクションの部分というのは短い総説です.論文で取り扱う課題について,歴史と現状の問題点を示して,論文の立場を示します.これをコンパクトに書くのは難易度が高いので,論文執筆は慣れるまではイントロダクションは最後に書くのがよいと思います.). 総説は上記のような性質があるので,通常はその分野である程度以上の経験を積んだ研究者に依頼があります.(英語で書かれている国際雑誌から総説の執筆依頼があると,自分も国際的に認めてもらったんだなあと思えてちょっとウレシイ.日本語だと読者が日本人限定なのでだいぶ嬉しさが少ない.)通常の論文はかなりテーマを絞り込みますから,ある意味で評価されなくてナンボ.分かる人だけ分かってくれればOK,なのです.しかし総説はその分野をちゃんと俯瞰できているか,その分野の重要な研究をフェアに紹介できるか,著者の目を通して見せることになります.これを同じ分野の他の人が読んで,「ダメだこりゃ」となる場合があるので,気を使います.それに関連研究者の仕事をバランス良く入れるという,多少政治的な配慮も必要. それで今回の総説ですが.M井化学のK林さんという方からのご依頼です.この方も増渕のこれまでの専門は自動車材料でないことはご承知です.しかし,書き手がいないので,NCCに移ったことだし勉強だと思って書け,という御下命でした.(書き手がいない理由は上述の通り.)引き受けてしまったものの,やはり勉強が足りない分野は厳しい.しかもこういう工業的な内容は論文があまり出版されていないので相当厳しい.結果として引用した論文数も多くありませんし,手近な情報だけをまとめたレベルの低い総説になってしまいました. こういうのを読まされる側はたまったものではありませんね.やはり仕事はちゃんと選ばないと周りにもご迷惑をおかけしてしまいます.義理で仕事をすることも必要だけれど自分の能力に応じてやるべきだと反省しました.

最近投稿した論文3つ

10月半ばからの10日くらいで3本論文を投稿しました.もちろん,10日で3つの研究ができた,のではありません.たまたま,同じタイミングで仕上がった(というか,その時点で切った)研究が3つ重なったということです. 1本はドイツのグループとの共同研究で,高分子溶液のシミュレーション技術を開発した,というものです.もともと増渕が2012年に先方に招待されたときから始めた一連の共同研究の一部です.プログラム開発やシミュレーションの実施はドイツの博士課程の学生,Langeloth氏がやってくれました.昨年,京都大の支援を受けて彼に京都に3ヶ月滞在してもらい,その間に増渕と相談しながら研究という形です.今年のはじめくらいに,Langeloth氏が論文を書いてくれて,それを増渕が揉んだりして,まずある雑誌に投稿しました.査読者から,改訂すれば掲載可能という評価はもらって,2回書き直して提出を繰り返したのですが,残念なことに最終的に却下されてしまいました.査読と改訂のやり取りに時間がかかり,その間にLangeloth氏は卒業してスイスの会社に就職してしまい,研究ができなくなりました.そこでドイツの先生方と相談した結果,増渕が引き継いで論文を改定し,別の雑誌に投稿した,という次第です. 学生さんの論文で,かつ研究室をまたぐ共同研究の場合,どういう内容にするか,どの程度論文に手をいれるか,簡単ではありません.研究が綺麗に仕上がって,誰がみても切り口が明確ならなんの問題もありません.しかしどういう研究にせよ,すべてを1本の論文に入れ込めることは普通はありません.たとえば上記の研究の場合だと,増渕としては実はもう少し追加のデータがほしいと思っているのです.しかしそのためには,研究におそらくもう1年くらいかかってしまいます.どのあたりで研究を切り上げて論文にするかは,研究室や先生方の間で違いがあります.それに学生さんは限られた時間しかありません.今回は,ドイツの先生方のご意向やドイツ側の事情を尊重して増渕は遠慮していましたが,新たに投稿しなおすことになって増渕が内容を調整しました. もう1本は増渕単著の論文で,高速流動下での高分子の運動に関する論文です.未解決問題に挑戦したけれども結局未解決のままです,という,ちょっとつまらん論文になってしまいました.しかし,すでにかれこれ1年以上検討してきた内容で,この切り口でやってもこれ以上意味のある結果は出ないと判断して,(半分あきらめて)投稿した次第です.単著ですから他との兼ね合いは全くありません.ある意味楽なものです. 研究を計画するときは論文にすることをある程度想定して進めます.論文も結果のすべてが出てから書くこともありますが(増渕は昔はこのスタイルでしたが),結果を想定して論文を書き進めておいて,結果に応じて改変していくこともあります(増渕は最近はこちらに近い).まとまった時間がとれなくなってくると,後者のスタイルの方がやりやすいように感じています.とはいえ投稿するとなると原稿のスタイルを整えたり図を綺麗にしたり最後に念のため読んでみたりする作業のために数時間まとめてほしいところです. 最後の1本は京大のときのボスとの共著です.この論文は実は先日亡くなったLikhtman先生との共著の論文にできたら良いと思って書いていたもので,先方のデータとあわせて提出して信頼性を増そうと目論んでいました.というのは,この論文の内容は,しばらく前にでた別のグループの論文を否定するものだからです.(この目的のために1年半くらい前からやっていた研究です).複数のグループが共同することで,より説得力を出せます.しかしLikhtman先生が急逝され,先方のポスドクの職探しのためにすぐ論文を出したいということがあった,また増渕の結果がいまいちだった,などの理由から,グループごとに別の論文とすることになったのでした. たまたま同時期に投稿した3本が,異なる研究形態によるものでしたので,ご紹介してみました.