1年生に様々な研究室を見学してもらおうという,物理工学概論が始まりました.
増渕が考えるには目的は2つあって,1つは学部での勉強をするにあたってモチベーションを高めてもらおうということ,もう1つはコース選択に役立ててもらおうということ.このうち後者について少し説明します.名大の物理工学科は学部1学年200人くらいいます.これが材料100,量子エネルギー50,応物50に分かれていきます.自分が学生だったころは応物は応物という独立した学科で1年から4年まで変更なしでした.最近は文科省の方針でlate specializationといって,入学時はまとめておいて,できるだけ後ろで分割しなさいということらしい.これは前にいた京大の工業化学もそうで,200人くらいまとめて取って,あとで分けています.こういう,最初大人数で入試をやることの良し悪しの議論は,いろいろあるところなので棚上げします.ともあれ,ある程度具体的に研究室をイメージしてコースを選んでもらう必要があるのは間違いありません.
そのようなわけで,毎週火曜日の午前中に6−8人くらいのグループが研究室にやってきます.彼らにレオロジーの初歩をお話して,アルファゲルに生卵落としてもらったりして遊んでもらい,こんな学問もありますよ,ちなみにうちは応物ですよ,というのを観てもらうわけです.1日1グループ,ではなく,2グループ来ます.45分が2セットです.
学生さんは何かを掴んで帰ったのかどうか?わかりませんが,レオロジーという学問があるのだということを紹介できればとりあえず十分です.
この機会はウチの部屋にとっては貴重ではあります.ウチは増渕が講義をやっていますが,応化1年向けの線形代数と,後期のほとんど応化向けの高分子物理化学しか担当がありません.また山本先生はNCC専任なので応物や物工での担当がありません.講義を持っていれば,その合間に研究の話をちょっとして学生をリクルートするということもできます.またザイオンス効果により,講義で顔を合わせているとなんとなく親しみが出てくるというのもあります.しかしできない,なので物理工学概論は活用したい.それでも研究室が多いため,すべての学生さんにウチの部屋を見てもらえるわけではありません.全体の6−7割しか来ません.
ちなみに学生実験を担当すればさらに学生さんに来てもらうことは可能です.簡単なレオロジー測定とか解析をやってもらうのが本当は良いと思います.が,今はとても無理.スペース,装置,人手,全て無理.ウチは2部屋しかなく面積も他の部屋の半分以下.この状態で学生実験を受け入れると安全性やセキュリテイ上の問題が相当あります(どういう問題があるかをここで書いたらそれこそ大問題なので書きませんよ).少なくとも学生実験の間は他の会議室や講義室を借りないと学生の受け入れは無理です.さらに現状は装置も揃っておりません.学生実験は通常,壊れても卒研に影響がない古い装置を割り当てたり,学生実験専用に組んだ装置を使います.ウチはそもそも卒研用の装置がまだ揃っていない.さらに研究室には学部生しかいないのでTAも配当できません.TAが配当できないと教員がつきっきりで対応する必要がありますが,NCCの業務がある現場ではそれは無理.
そのようなわけで,ここで蒔いたタネが芽吹くとすれば3年後,現在の1年生が4年生になり,卒研配属が行われるときです.そんな長い長い記憶効果を期待する講義です.