10月半ばからの10日くらいで3本論文を投稿しました.もちろん,10日で3つの研究ができた,のではありません.たまたま,同じタイミングで仕上がった(というか,その時点で切った)研究が3つ重なったということです.
1本はドイツのグループとの共同研究で,高分子溶液のシミュレーション技術を開発した,というものです.もともと増渕が2012年に先方に招待されたときから始めた一連の共同研究の一部です.プログラム開発やシミュレーションの実施はドイツの博士課程の学生,Langeloth氏がやってくれました.昨年,京都大の支援を受けて彼に京都に3ヶ月滞在してもらい,その間に増渕と相談しながら研究という形です.今年のはじめくらいに,Langeloth氏が論文を書いてくれて,それを増渕が揉んだりして,まずある雑誌に投稿しました.査読者から,改訂すれば掲載可能という評価はもらって,2回書き直して提出を繰り返したのですが,残念なことに最終的に却下されてしまいました.査読と改訂のやり取りに時間がかかり,その間にLangeloth氏は卒業してスイスの会社に就職してしまい,研究ができなくなりました.そこでドイツの先生方と相談した結果,増渕が引き継いで論文を改定し,別の雑誌に投稿した,という次第です.
学生さんの論文で,かつ研究室をまたぐ共同研究の場合,どういう内容にするか,どの程度論文に手をいれるか,簡単ではありません.研究が綺麗に仕上がって,誰がみても切り口が明確ならなんの問題もありません.しかしどういう研究にせよ,すべてを1本の論文に入れ込めることは普通はありません.たとえば上記の研究の場合だと,増渕としては実はもう少し追加のデータがほしいと思っているのです.しかしそのためには,研究におそらくもう1年くらいかかってしまいます.どのあたりで研究を切り上げて論文にするかは,研究室や先生方の間で違いがあります.それに学生さんは限られた時間しかありません.今回は,ドイツの先生方のご意向やドイツ側の事情を尊重して増渕は遠慮していましたが,新たに投稿しなおすことになって増渕が内容を調整しました.
もう1本は増渕単著の論文で,高速流動下での高分子の運動に関する論文です.未解決問題に挑戦したけれども結局未解決のままです,という,ちょっとつまらん論文になってしまいました.しかし,すでにかれこれ1年以上検討してきた内容で,この切り口でやってもこれ以上意味のある結果は出ないと判断して,(半分あきらめて)投稿した次第です.単著ですから他との兼ね合いは全くありません.ある意味楽なものです.
研究を計画するときは論文にすることをある程度想定して進めます.論文も結果のすべてが出てから書くこともありますが(増渕は昔はこのスタイルでしたが),結果を想定して論文を書き進めておいて,結果に応じて改変していくこともあります(増渕は最近はこちらに近い).まとまった時間がとれなくなってくると,後者のスタイルの方がやりやすいように感じています.とはいえ投稿するとなると原稿のスタイルを整えたり図を綺麗にしたり最後に念のため読んでみたりする作業のために数時間まとめてほしいところです.
最後の1本は京大のときのボスとの共著です.この論文は実は先日亡くなったLikhtman先生との共著の論文にできたら良いと思って書いていたもので,先方のデータとあわせて提出して信頼性を増そうと目論んでいました.というのは,この論文の内容は,しばらく前にでた別のグループの論文を否定するものだからです.(この目的のために1年半くらい前からやっていた研究です).複数のグループが共同することで,より説得力を出せます.しかしLikhtman先生が急逝され,先方のポスドクの職探しのためにすぐ論文を出したいということがあった,また増渕の結果がいまいちだった,などの理由から,グループごとに別の論文とすることになったのでした.
たまたま同時期に投稿した3本が,異なる研究形態によるものでしたので,ご紹介してみました.
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