近畿大学を訪問

10/9に,堂寺先生荒井先生にご招待いただいて近畿大学でセミナーをしてきました.

堂寺先生は(上記のリンクから詳しくは見ていただきたいですが)高分子に限らずソフトマターの統計物理でご活躍されている研究者です.(お若く見えるのですが増渕のだいたい10歳上だということが今回分かって驚いたと同時に,10歳も違うんだったらまあ彼我の差もさもありなんと納得し,次の10年がんばろうと思いました.)例えば化生の松下研の研究とも関連が深い,準結晶のご研究が特に有名で,Natureに論文を掲載されています.NatureやScienceは(負け惜しみ半分でいうと)話題を選ぶところがあるように思うので,増渕の研究だとまあ載らないわ.しかし,分野が近くても内容がよければ載るという好例です.また,増渕が熱力学や統計力学の講義をするときによく使わせていただいている,このビデオとか,フーリエ変換のこういうノートとか,とても素晴らしい.尊敬する先輩研究者です.

一方,荒井先生は,先生が慶應大学の泰岡研究室の学生さんだったころ(増渕はそのころ農工大で助教授をしていた)からの知り合いで,増渕のほぼ10歳下です.ソフトマターシミュレーションの分野でこれからを期待される(というかこれからどんどん偉くなってもらわないと困る)研究者です.特にDPD法という計算手法に関しては,企業などで広く使われてはいるものの,大学で研究している人となると日本では荒井先生しかいないように思います.

さてセミナーの内容ですが,こういうの(もしかしたらリンクが後で切れるかもしれない.そのときはこっち)でした.高分子の話であるが,化学式はほとんど出てこない.かつ化学反応はまったく出ないという内容です.すなわち,高分子は化学的な構造で決まる分子そのものの性質も大事であるが,分子がどういう形で固定されるか,どういう形に並べられて材料になるかという,物理や機械のセンスで決まることも,とてもたくさんあるんですよ,という内容でした.高強度繊維とか.バッテリーのセパレーターとか.有機半導体とか.高分子が伸びて並んでいると性能が高くなるものはたくさんあるのです.また,分子をうまい形で固定するには,分子がどうやって動くか,そのブラウン運動を知らなければなりません...というわけで,増渕の得意方面である高分子ダイナミクスに持っていくのです.もちろん高分子ダイナミクスそのものも,遺伝子解析に使われていたり,ヘアワックスの使い勝手を決めたり,低燃費タイヤの性能を決めたりします.ここまでが前半.後半は,高分子のダイナミクスをシミュレーションで扱うにはどうするか,という,まさに増渕の研究内容をお話ししてきました.

堂寺研,荒井研,それぞれの学生さんたちあわせて20名くらいが聞いてくださったのですが,多分しんどい内容だったと思うけど熱心に聞いてくれました.なにしろ堂寺研の3年生は,数日前に研究室に配属になったばかりらしくて,よくまあ.質問もたくさんしてくれて,とても気分よくお話しできました.

近畿大学は3年生から卒研配属になり,修士にすすむ学生さんはあまり多くないのだそうです.しかし3年後期から卒研するので,できる子たちは4年生で学会発表したり学術論文を英語で投稿したりします.4年で論文投稿するのは近大ではそんなに特別なことでないらしく,名大でも京大でも4年生で論文出している人はおろか,学会発表というのもかなり稀である,ということを話したら逆に驚かれてしまいました.ウチの研究室に遊びにきてくれていた荒井研のKくんも論文をSoftMatterという一流誌に投稿しており,どうやら今年中には出版されそうな情勢でした.K君すげえな.修士行ったらもっと頑張れよ.荒井研のA君という3年生から,現在やっている研究内容を聞きましたが,もうちょっとやったら論文になりそうな勢いでした.A君も機会があったら名古屋に来てくださいね.先生方がテーマややり方を工夫しているという面はあろうかと思いますが,手を動かしている学生さんたちが頑張っていればこそだと思います.

セミナー後は懇親会を開いてくださいました.堂寺研の3年生や4年生とお話ししましたが,学会発表した研究を話してくださったり,博士課程に進みたいがどう思うかと聞いてこられたり,非常に熱い情熱(って死語のような気もするが)を感じて元気をいただいて帰って来ました.

堂寺先生,荒井先生,それに研究室のみなさんに感謝申し上げます.

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