我々のグループ名にある「レオロジー」とは,物質の流動/変形の科学です.英語ではrheologyと書き,中国語では流変学と書きます.似たような学問に流体力学と材料力学があります.確かにいずれの学問でも物質の流動/変形が議論されますが,これらの学問とレオロジーでは立場に明確な違いが有ります.流体力学や材料力学では,複雑な境界条件や外力の下で現れる流れや変形を扱いますが,対象は理想的あるいは比較的単純な固体/液体です.よって流れ方や変形のしかたに関心が持たれます.一方,レオロジーは,液体とも固体ともつかない,変な物質が,比較的単純な境界条件や外力の下で示す挙動に注目します.つまり,流れ方よりも物質の方に興味の中心があるのです.
レオロジーは学問としては比較的新しく,1920年代後半にイギリスのグループにより提案されました.量子力学の成立と同じような時期です.しかし内容は古くから研究されています.例えば,記録に残る最も古い例として,古代エジプトの水時計のキャリブレーションのために水の粘度の温度依存性が調べられていることがわかっています.またEinsteinの1906年の博士論文の内容は,コロイド分散液(要するに牛乳です)の粘度に関するものです.
具体的にはどんなことを議論するのでしょうか?例えばハミガキを考えてみましょう.ハミガキは固体ですか?液体ですか?固体だとすれば,なぜチューブから出せるのでしょう.液体だとすれば,なぜ歯ブラシの上で流れないのでしょう.マヨネーズやクリームはどうでしょう.これらは容器から簡単に取り出せますが,料理やケーキの上では形を保っています.単純な液体である水やハチミツは,すぐに流れてしまいます.ゴムはどうでしょう.ゴムは固体ですが,タイヤや防音/防振材料として使われています.このようにエネルギーを散逸するのは液体に特有の性質なのです.
我々のグループでは,このような液体と固体の両方の性質を示す物質,ソフトマターについて,そのレオロジーと物質内部の構造やダイナミクスとの関係を調べています.
レオロジーについてより詳しく知りたい方は,以下の記事もお読みください.
今後も記事を増やす予定です.他にレオロジーについて書いたブログエントリーは下のリストからご覧ください.
増渕が書いた 「おもしろレオロジー」 も,研究室までお越しくだされば貸出いたします.
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