レオロジー的な物質の分類

理想的な固体,理想的な液体:
応力をひずみや歪み速度の関数として調べることで,物質の振る舞いをレオロジー的に特徴付けていきます.このとき,理想的な固体,理想的な液体の振る舞いを手がかりにして考えていきます.まず理想的な固体は,フック弾性体と呼ばれるもので,応力とひずみが比例関係にあるものです(高校までに習ったバネの伸びと力の関係を思い出してください).比例係数Gを弾性率(正確にはせん断弾性率)と呼びます.単位はPaです.一方,理想的な液体はニュートン流体と呼ばれるもので,応力と歪み速度が比例関係にあるものです(こちらはバネと違って大学でも学科によっては習いません).比例係数を粘度と呼び,単位はPas(パスカルセカンド)になります.

レオロジー的な物質の分類:
上記の理想的な固体と理想的な液体をある種の極限として,それらの間に様々なレオロジー挙動があります.下の図は英国レオロジー学会がNatureに出した分類です(Nature 1942 v149-3790, p702).上下二段がありますが,上段は一定の応力のもとでのひずみの時間変化を示しています.破線は応力をゼロにした後の挙動を示します.(元の論文では文字の定義が違っており,このNatureの論文ではσをひずみとして使っています.)下段は右3つとそれ以外で違っており,右3つについては定常状態での応力に対するひずみの変化です.(元の論文では応力はS,ひずみはσで横軸/縦軸に書かれています.)残りの6つは,定常状態での応力に対するひずみ速度の変化です.


図 レオロジー的物質の分類

図でフック弾性はどこにあるでしょうか?まず物質を変形させた時,流れてしまう(Flow)か,弾性変形するだけで流れないか(Elastic deformation)で右と左に分かれます(ここでいう“流れる”,とは,変形させる力を取り除いた時に物質の形状がもとに戻ろうとしないことを言います).フック弾性は流れないので左側をたどると,理想的(Ideal)か,そうでないか(Non-ideal)を訊かれます.理想的な固体は力を取り除くと瞬時にひずみがゼロになります(つまり変形が瞬時にもとに戻ります).理想的でないものは,外力に対する応答に遅れがあったり,完全には戻らなかったりします.理想的な固体のうちで,さらに応力とひずみが比例関係にあるものがフック弾性体(つまり左端)というわけです.

ニュートン流体はどうでしょう.流れるもの(右側)をたどると,粘性(Viscous)と塑性(Plastic)に分かれています.塑性とは,ある一定以上のちからを加えた時に流れる性質です.よってニュートン流体は右の粘性を選びます.さらにニュートン粘性(Newtonian:粘度がせん断速度や時間に依存しない)か,それ以外(Non-Newtonian)かを選ぶと,右端がニュートン流体となります.

フック弾性体を含め左3つは固体(流れない物質),ニュートン流体を含め右3つは液体(流れる物質),真ん中3つは塑性体(物質で決まる,ある一定の力よりも弱い力を加えたときは固体,それより大きな力を加えたときは液体)です.食品,化粧品,その他身の回りの物質が,どのカテゴリーに入るか,考えてみてください.

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